世の中に人工的に作られる匂いが、至る所にあります。
滋賀県立琵琶湖博物館には、自然の匂いを、忠実に人工的に再現した展示があります。この匂いが自然の匂いなのか、人工の匂いなのか分からなくなるほどです。
秋になると金木犀の匂いを感じることができます。しかし、子どもによっては、「トイレの匂いがするね」という時があります。入浴剤も多様な匂いのものがあります。
子どもに匂いの体験をしてもらいたくても、人工の匂いが先になり、本来の自然物との匂いと逆転してしまっています。さらに、たき火をしている時、子どもが煙に巻かれて、「煙たい」というかと思ったら、「煙が臭い」と言います。こういう風に匂いにまつわる言葉も変わってきています。
匂いを言葉にすることは難しいですが、こういった感覚が無いと、物を食べた時の言葉も変わってくる気がします。日本の食生活は、発酵食品が欠かせません。
味噌、酒、醤油、鰹節、くさや等、「芳醇」という言葉で言い表すように豊かな匂いが味を引き立たせます。家族や親族で集まった時、楽しくおしゃべりする中、飲み食いすることで、味わうだけでなくプラスの感情を伴った匂いの記憶も残っていくと思います。
来週は、最終章『におい』のこれから